俺が足りない

多重影分身しても足りない人生

『創作彼女の恋愛公式』感想&評価

Intro

ヘンタイ・プリズンの発売日が延期され年内最後の新作エロゲと期待していたこの作品ですが蓋を開けてみると、残念なできで悲しかったです。

ainolinks.com

※このページは作品のネタバレを含みますので、未プレイの方は閲覧注意

Course

共通ルートまでの僕

個別ルートを終えた僕

Review

お話の構成

 〇話××××××××(タイトル)といった感じで話ごとに進む物語の構成。

 昔やった『W.L.O.世界恋愛機構』もこんな感じだったなと思いだした(あかべぇ系列なのでそりゃそうか)

 間延びせず、はっきり展開したい話が区切られていてわかりやすくてグッド。

 欲を言えば共通ルートも単一ヒロインにフォーカスを当てた話ばかりだったので

 もう少し工夫は欲しかったかな。でも飽きは来ない共通パートでよかった。

お話の要素

 クリエイターを巡る話。基本的に出てくるヒロインたちはみな素質のある天才クリエイターの類なので雲の上の話という感じかと思ったが、人間的な悩み(普通の人としての要素を捨てるか)が扱われていて共感性は持てた。特にヒロインではなくモブで出てくる大人組や下級生は一度クリエイターを志した人ならわかる悩みを拾って話を展開しているので、少なくとも社会人兼業クリエイターは刺さること間違いなし。

 創作を題材として扱った作品は近年多くみられるが、例えばラノベでいえば「冴えカノ」と比較すると、扱う題材や展開が別ベクトルで被らず区別している感じがした。要するに題材の扱い方と組み立ては高評価であった。少なくとも共通ルートまでは…

共通ルート

 一本道で選択肢がほとんどない今風の作品であった。内容は上でも触れた通り話を区切り〇話として構成を組んでいるためか間延びなくわかりやすい。また各ヒロインともに設定の方向性が違っているためか、それぞれ絡んだ時のハーモニーはよかった。共通ルートだけやった感想でいえば某批評サイトでは80点後半つけてもいいかなと思う内容。

個別ルート

 どうしてこうなった個別ルート

 まず構成として、逢桜以外の√は全て分量が薄かった。

 扱おうとしている材料(シナリオ上の困難な壁など)はとても良いのだが、展開が早すぎてキングクリムゾンしている。体験版であれだけコツコツ積み上げてきた積み木(という名の作品)が急に崩れていくのを感じました。またそれに伴いエロシーンもやっつけ感がすごかった。エロパートは数シーンがあまりシナリオ上離れず固まって詰め込まれており、話の展開でエロというよりは話パートとエロパートをはっきり分けている感じがしました。とても残念……。CGは有葉先生の神イラストだっただけに本当に悔やまれる。

 そして肝心の逢桜√の評価についてだけど、個人的には死なせるシナリオとしたのは失敗だったと思う。譲歩するなら最後の終わらせ方をボカしているから生死ははっきりしていないけれど、生きているなら最後に逢桜を出さない終わらせ方を取る必要はないので消去法で死んでいると思っていいと思うし、それなら手術をすれば助かる可能性があるかもしれないという下りを入れる必要はなかったな。

 元をたどると「命を削ってでも作品を生む」クリエイターの生きざまということなんだろうけど、ほかのヒロインの√に比べて重すぎた印象。他のどのルートも主人公&ヒロインは成功したサクセスストーリー展開だけなので、思い切って主人公のスランプを重くするなど逢桜√だけ趣を変えてガラッと展開してもよかったのかなと思う。もしくは逆に他のヒロインルートを重くして見るのもあったかもしれない。逢桜√以外はどのルートも伴う痛みが薄いところもこうして全体でみると甘かったのかな。

 ここらへんはもはや総合的な感覚の話で、例えるならおかずの方向性と味付けの問題なんだろうけど、僕はダメだった。

 この話の展開として「将来のある」若者クリエイター像があっただけに逢桜√だけミスマッチな感じがしたのだろう。刹那的な恋ということでプレイしながら『半分の月がのぼる空』を思い出しました。

General Estimation

 話のとっつきやすさ、要素、展開ともに良く、CGやゲーム全体としてのハイクオリティさと相まって最高の共通ルートをこさえたゲームであるが個別ルートは薄く、着地に失敗し名作になり損ねた良作である。

 

また次回お会いしましょう。