圧倒的に何かが足りなかった ゆずソフトサワーデビュー作『PARQUET』レビュー
このレビューは過分にネタバレを含むのでクリア済みの方のみお読みください。
結論
駄作ではないけど「圧倒的に何かが足りなかった」
作品レビュー
設定
いつものゆずソフト
ライトなSF要素を混ぜた現代~近未来をバックにした作品。
「BMI」や「人格移植」など引き付けられる設定は出してくるが、伏線あるいはバックボーンは必要以上に深くは語られない。
ゆずソフトによく見られる、「ライト」さは今作も健在で、比較的ディティールは抑えめに書かれている(省かれている)。
ヒロインは2人であるが、ほとんど相対するのは1人だけなので、実際は主人公とヒロイン+αで世界のすべて。ローカルプライスで発売しているギャルゲーと構成はあまり変わらない。
構成
目新しいと思いきや普通
ヒロインは2人であるが、今作では2人で1人なのでルート分岐はない。
アフタールートを除けば選択肢も存在しないので、本当の意味で一本道。
なぜかクリア後のアフターストーリーで2人の派生ルートがあるが、ほんへが始まる前に話が終わる。なんだこれ
話の進行は、主人公とヒロインの周りに起こる出来事、ヒロインの願いをかなえていくことの繰り返し。
話の起伏の作り方もストーリー全編を通してワンパターンで、驚きがない。
山谷の高低差も大きく差異がなく感じることがない。
シナリオ評価
完結した作品であるが、シナリオに魅力を感じない
ゆずソフトの強みといえば、ほどよくオリジナリティのある設定でほどよく事態を解決し(困難に打ち勝ち)、可愛いヒロインと多分にいちゃこらするキャラゲーなところ。
しかし今作では個別のヒロイン攻略ルートもなく、雰囲気のラブコメをするのみで恋愛関係まで行かない。ありていに言えばイチャイチャが足りないので、今までのゆずソフト作品と比べると物足りなさを感じてしまう。
その上、シナリオのディティールは以前と変わらず、展開した設定の上澄みを掬って終わってしまうので、最後までやり切ったときの感動はあまり感じない。
具体的に言えば、ツバサが人格移植をほどこしリノと別れるシーンは恐ろしく解像度が低く、次のシーンでは移植が終わった後にすっ飛んで行ってしまいやっつけ感が凄まじい。
つまるところ、キャラゲーかと思えば、ヒロインと密接にラブコメするわけではなくかといってシナリオに深みはないので、乱暴に言ってしまうと、むりりん先生の可愛い絵でダブル東山奈央ボイスの掛け合いを楽しむだけのゲームになってしまっています。
今回の作品は新ブランド『ゆずソフトサワー』としての新作品ということで『サワー』に期待していたわけだけれど、肩透かしを食らって終わりました。
ゆずソフトがビールだとすればサワーなのでしょうか。解せません。
「エロ」を抜いたことで、構成やシナリオの見せ方が大きく変えてくると思いきや、悪い意味でゆずソフトまんまだったので、目新しさは感じず、逆に「エロ」がなくなったことで、単純に引き算され魅力が薄まっただけの作品になってしまった印象を受けます。
今まで、ゆずソフトの作品は皆勤賞でプレイしてきましたが、今作に関してはプレイして一番失望しました。「エロ」があってこそのゆずソフトかなとは思っていましたが、「エロ」抜きで作るとこのぐらいなのかと底が見えてしまい愕然とした気持ちです。
その他
告知と販売タイミング
告知とほぼ同日に発売。DL版だけとはいえ事前の告知がなかったのでマーケティング面で滅茶苦茶過ぎて不安感を覚えた。
売るための導線作りが見えない。点と点がつながっていない宣伝もあるが、今回に至っては1点しか点がないので広がる余地もないのかなぁと…。
Steamやスマホ版が遅れて発売しましたが、それほど話題になっていない印象。
余談
プレイして語りたい熱量が高かったので荒ぶったレビューになったことをお許しください。酷評しているようにしか見えませんが、ゆずソフトは今も好きでこれからも応援していこうと思う気持ちは変わりません。落ち着いたころにまた気持ちが変わったら追記したいと思います。